≪鍼灸科≫ 押して、もんで、セルフdeツボ療法(2)
新型コロナウイルス感染症とマッサージと鍼灸
新型コロナウイルス感染症は生活様式を変えなければならない程、社会的にも大きな影響を及ぼしています。お隣の中国でははるかな昔から感染症と戦ってきました。漢方薬のシステマチックな運用を最初に記載した『傷寒論』という書物も西暦3世紀頃書かれたと言われています。その頃から中国伝統医学では感染症に対する治療法を模索してきました。
今回は東洋医学の中でも大きな存在である中国伝統医学による新型コロナウイルス感染症に対する自分でできる予防手段の一つを紹介します。
中国ではもちろん各種現代医学的な対策も行っていますが、中国鍼灸学会は「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン」を作成し、伝統医学による対策方法を提示しました。このガイドラインでは鍼灸治療に用いるツボの処方の他、専門家指導の下に家庭で行う健康法など沢山の伝統医学的対処法が記載されています。
鍼灸療法はウイルスを直接排除する力はありませんが、身体表面のツボを刺激し、経絡を通して臓腑の働き強化し、疫病の邪気(ウイルス)に対抗する力を付けることを目指します。このガイドラインで使われているツボは呼吸機能や免疫機能、栄養の吸収機能等を整え、身体のコンディションを良好な状態に保って感染症に対する過剰な反応を調整するために、治療や予防など様々な対処法が紹介されていました。
今回はこの中から主に予防・保健目的で処方される経絡マッサージを紹介します。
【マッサージの対象となる部位】
・上肢の肺経(手のひらを上に向けて肘の外側1/3程度から親指を通るライン)
・上肢の心経(手のひらを上に向けて肘の内側1/3程度から小指を通るライン)
・膝下の脾経:脛骨(すねの骨)の内側とふくらはぎの間から内くるぶしの前を通って足の親指の内側を通るライン)
・膝下の胃経(膝蓋腱から脛骨の外側すぐの筋肉の膨らんでいるところを通って足の第2指と第3指の間のライン
上記の4つの経絡を指圧したり、揉んだり、軽くたたいたりして刺激を与えましょう。1回の施術時間は15~20分で、腫れぼったい感覚があるのが適切となります。
心地よい程度の刺激を心がけ、やりすぎは避け、少し刺激が足りないぐらいで終えるのがコツになります。ガイドラインでは触れられていませんでしたが、マッサージをする場合は上肢の肺経や心経は肘から指の方へ向け、足の脾経は足先から膝へ向けて、胃経は膝から足先に向けて軽くこするような刺激を与えると良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。原因となるウイルスの増殖を直接抑え、ワクチンなどで感染を防ぐ現代医学と身体の調子を整え、免疫力を上げる東洋医学。それぞれの得意分野を生かして健康で豊かな生活を送りましょう。
写真1 心経(赤線)と肺経(青線)
写真2 胃経(赤線)
写真3 脾経(青線)